ひとり旅に出る。vol.1 航空券探し

旅に出よう、と思った。どこか遠く。海を越えて。

けれどどこに?と自分で問う。それはまだ決めていない。Google Mapをくるり回して、スカイスキャナーで「すべての行き先」を検索して、じっと世界を見る。

上から安い順に、韓国、台湾、香港、中国、タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、シンガポール。残念ながら、東京からすぐに行ける海外は、大体行き尽くしてしまっていた。

どこかへ、行きたかった。すべて捨て去って、とまでは言わないけれど、脱ぎ去って、軽くなって、冬とか春じゃなくて、夏の国へ。じんわり、汗をかくような。私のことを誰も知らない、私だって、その土地の誰のことも知らない。そんな街へ。

「タイかな」と、視界の隅が言う。「タイ、でしょうね」と無意識が言う。

タイ・バンコクへ行って、ラオスへ、ミャンマーへ、スリランカへ、インドへ、本気を出したらイタリアへだって。乗り継いでしまえば、世界中、今なら8万円も出せば、往復航空券が買えてしまう。もちろん10万円とか、15万円とかする日もあるけれど、この数年で私が手に入れたのは「一番航空券が安い日」に旅立てるという「ライフスタイル」だった。

正直に言って、旅が私にとってなんなのか、もうあまりよく分からなくなっていた。「もしかしたら、そうじゃないものを求めているのかもしれない」。激しく、物理的な移動を伴うこと。文化を超えて、透明になって、時折誰かと出会って、視線を交わして、そして去ってゆくような。

そうじゃなくて。

でも、まだ分からなかった。確信が持てなかった。「海を越えた時の自分」のアドレナリンの出方や、意識が澄み渡る感じ、これからなんでもできそうな勢い、自分を肯定してあげられる強さ。そういうものが、湧き出てくるあの瞬間を経験させてあげたい。そうじゃないと、「何も判断できない」と感じていた。

日本の冬は、寒い。タイの冬は、暖かい。そんな当たり前のことが、東京だと信じられなくなってくる。

もう一度、旅に出よう、と思った。スカイスキャナーの検索の行き先を変えて、海なのか、山なのか、街なのか、はたまたそのすべてなのか。「心」がどこに行きたがっているのか、「私」が求めている風景は何なのか、まるでダーツを投げるみたいに、探っていく。