夏の国に着いた vol.7 「久しぶり」と迎える人と

その国を一番最初に感じるきっかけは、到着を知らせる機内アナウンスの声。「現地の天気は晴れ」とか「現地の気温は34℃」とか、言葉の最後に「ご搭乗ありがとうございます」……今回の場合は、「コップンカー」と音が響いた時。

タイ語の挨拶の基本は、「コップンカー」と「サワディーカー(こんにちはの意、男性の場合はサワディーカップ)」。旅を始めた最初、旅人の登竜門ともいえる存在だったタイを目の前にして、「一生コップンカーとサワディーカーを言って生きていきたい」と願ったものだった。つまり「住みたい」と思うくらいに、魅力的な場所に映った、ということ。

その通り、タイは私が人生でもっとも多く通う国となった。今まで訪れたのは、首都のバンコク、第二の都市で古都のチェンマイ、リゾートのプーケットにクラビ、離島のピピ。食事が美味しく、物価が安く、Wi-Fiは非常に速く街中の至るところに素敵なカフェがあり、街ごとに異なる景色を提供してくれる、微笑みの国。

そして何と言っても、私にとってとても大切なポイントは、1時間のタイマッサージが、1,500円くらいで受けられることだった。画面を見つめて疲れたカラダ、日々回復。なんというルーティンワーク。

トランジットステイも含めたら、これでもう何度目のタイ訪問か、私はもうわからなかった。多分、6回目とか、7回目とか。それくらいだと思うのだけれど、いつでも変わらずタイは「おかえり」と迎えてくれている気がした。

バンコクには、ほんの数日だけ、寄る予定だった。おもな目的は、古性のちちゃんが、先月からバンコクに移住していたから、会いに行くこと。遊びに行こう、と思った。

最後に会ったのは、たしか1月末の東京・池袋。イベント会場ですれ違った。冬ではなく、夏空の下笑う彼女は、自分の意思で暮らす場所を決めて、そして確かに暮らし始めたという実感を伴って、少し強く見えた気がした。

彼女のコンドミニアムの部屋から見えるバンコクの街並み。窓の外、強い日差しとエアコンの音。異国の水が淹れた美味しいお茶。飲んで、私も変わらなきゃ、と想う。何を好きか、何を大切にするべきか、わかっている人は強い。「貫いていて、すごいね」とのちは言う。でも、まだ全然、私は自信がない。

バンコクの都会らしさは、ほぼ東京のそれと似ている。コンビニには日本のお菓子がたくさん売っているし、薬局には日本のスキンケア商品やコスメ、消耗品が日本語のパッケージそのままに並び、家電量販店には秋葉原のそれと同じラインナップ、電車は「ラビットカード」と言うパスモみたいな電子マネーを「ピッ」とかざせば乗れる。街を歩けば必ず日本語が聞こえて、通りのレストランに入ったら隣が日本人のグループだった、なんてことはザラだ。

とくに今週末は日本人の旅人向けのイベントが、バンコク市内で行われる予定だから、知り合いの旅人たちがみーんなバンコクに集っていて、異国のはずなのに、知らない駅を歩けば向こうから友人が偶然やってくる……なんてシチュエーションが実際に何度か起こった。

親密感。異国のはずなのに、どこか日本が近しく感じられる。バンコクに着いた、と日本より濃い色をした夕焼けと、じめり、とカラリ、が混ざったような複雑な夏の空気の、夜の街に肩を撫ぜられながら想う。